Dr.T:(見ておったのか・・・。)あー、そ、それはこのHPの管理者たくらんけ氏との約束でだな・・・。
助手:もぉいいっす・・・。話を進めてください(諦) なんで心霊写真が幽霊のいない証拠みたいなものなんですか?そこにはいない目に見えない幽霊が写真にだけ写っているんですよ?あぁ、こわーい!!
Dr.T:・・・いいかね、心霊写真には色がついているな?
助手:まぁカラー写真が当たり前ですからねぇ、今は。
Dr.T:色とは何だ?
助手:やだなぁ、色ってのは可視光線をその波長の長短で分類したもので・・・。あれ?
Dr.T:どうした?
助手:・・・色って、※1可視光線だ!つまり目に見える・・・?
Dr.T:そのとおり。X線、赤外線、紫外線など不可視光線以外は目に見える。「色」は我々の目に間違い無く見える範囲の光線であることを示している。目に見える範囲の光線は写真にも写って当たり前だが、幽霊が目に見えなければ写真にも写りようがないな。
助手:え、え?そうなるの?でもX線写真ってあるじゃないですか。レントゲン。あれは目に見えないけど写っているでしょ?
Dr.T:レントゲン写真はフィルムに写そうとするものを乗せて(かぶせて)から光を当てる。X線は物質をすり抜けるためほとんど反射しないから透過光で写さねばならないからだ。心霊写真がX線の感光だとしたら大変だ。幽霊はX線を自分から放射していなければならないぞ。
助手:そんな〜、幽霊がそばにいたら被爆しちゃうってことですか?!
Dr.T:まぁそんな話は聞かないから、幽霊がX線を発していることはあるまいがな(笑) たしかにフィルムは※2X線には反応してしまうが、反射光を撮影している限りX線は写り込みづらいぞ。
助手:・・・だ、だから「不思議」なんでしょ?見えるはずのものが見えないってことが!?
Dr.T:不思議でもなんでもない。写真は現像するまでは何度だって感光させることができるからな。
助手:?
Dr.T:わからんやつだなぁ。要するに「インチキ」で心霊写真と同じモノが撮れるってことだよ。
助手:どうしてインチキになるんですか?前に僕、友達と花火してて心霊写真撮ったことがありますよ。そのとき、普通のポケットカメラで、撮った後僕が現像に出したんですから細工のしようがないじゃないですか。
Dr.T:ナニが映っていた?
助手:なんか、赤く光ってました。写真の半分くらいがぼうぅっと。でも公園の街灯以外はなんも光がなかったんですよ?
Dr.T:・・・写真ってものを知らんな、君は・・・。それはフラッシュが花火の煙に乱反射して露出オーバーになったものだ。ポケットカメラではよくある。他にもタバコの煙、朝霧などに反射するとわけのわからない光が身体を横切ったりして映ることがあるが、それは間違い無く自然現象だ。赤くなったのは乱反射して長い波長のみが残ったせいだよ。目に反射したフラッシュの光で目が赤く映ることがあるだろう。赤目と呼ばれる現象だ。あれも目の奥に反射した光が瞳孔を通して映っているにすぎない。カムイとは関係無いが(笑)。
助手:そ、それじゃこういうのは?泳いでる女性の黒髪のばーっと広がっている部分に苦しげな男の顔がごぁーっと!どうです?これはコワイでしょう?
Dr.T:き、君の顔の方がコワイわ。ナニ?女性の黒髪のぶぶん?ほーーーーぅ。
助手:完全にバカにしてますね?
Dr.T:ネガフィルムを良く見たことがあるかね?
助手:ありますよ。逆に映っているやつでしょ?
Dr.T:まぁそんなもんだな。で、そのネガで「白」はどうなっている?
助手:えーと逆になるんだから、黒くなっていたはずだけど・・・。
Dr.T:では「黒」部分は?
助手:・・・白・・・ってわけじゃないっすね。ほとんど透明だった気が。
Dr.T:そこだ!
助手:どーこーだー!?
Dr.T:おかしなリアクションをするな!ほとんど透明。すなわち感光剤が無反応ということだ。※3ネガフィルムは光が当たった部分の感光剤が反応し被膜となる。光の強いつまり白い部分ほど反応し、ほとんどの光をさえぎる膜となる。それに対し黒い部分は光をほとんどさえぎらない。ネガフィルムの黒を撮影した部分その直後はほとんど新品のフィルムと変わらない。つまり、新しい画像を映し込みやすい場所であり、逆に言えばあらかじめ映し込んでおいた画像をはっきりと出しやすい場所でもある。
助手:ま、まさか・・・。
Dr.T:そう、事前に暗室など真っ暗な場所で新品のフィルムに自分の顔を映し込んでおく。なるべく広い場所で、光源は懐中電灯などを使い背景が映り込まないようにするのがポイントだ。あとはそのフィルムを完全には巻き戻さずに、ポケットカメラにいれ、出来る限り暗い場所、黒いものを映すようにする。花火大会、黒い服の人なんかだな。明るい場所で撮れば前に撮った顔は後に撮影した画像に溶け込んでしまうので、心配は無い。中途半端でもそれなりに心霊写真っぽく見えるものだしな。
助手:でも、でもでも、・・・それはポケットカメラでは難しいですよね・・・。
Dr.T:最近のカメラは※4一眼レフでも自動巻き上げ、自動巻き戻しだからな。撮影済みになると勝手に巻き戻してしまうので、フィルムをもう一度カメラに入れられる状態にするのは素人には難しいな。
助手:そーでしょう?古い一眼レフを持っていて、その操作に精通している人ならまだしも、普通の人が撮影済みフィルムを撮影前の※5ベロが出ている状態に戻すなんてできませんよ。
Dr.T:そういうと思った。ほれ。これを持って近所の写真屋に行ってだな、こう言うんだ。「すいません、撮ってないフィルム巻いちゃったんで、戻してもらえますか」ってな。
助手:なんです?ベロが出てない・・・撮影済みフィルム?・・・・じゃあ、行って来ます・・・・・・・・・・・・・・・・・行ってきました・・・・。
Dr.T:なんだ、それこそ幽霊みたいに暗い顔をして(笑)、どうだった?
助手:・・・・ベロ、出してもらえました・・・。しかもタダで・・・。くぅうぅぅ(泣)。
Dr.T:そうだろう。ポケットカメラでも技術が無くても事前の細工は可能だということだ。
助手:・・・でもですねぇ!僕もっとすごいの見たことありますよ。二重露光なんかじゃない!
Dr.T:なぜわかる?
助手:だってだって、普通の心霊写真ってぼーっとした顔が映っているじゃないですか。それこそ二重露光のように。でも今度のはとっておき!身体の一部が無いんです。さぁこれなら説明はつかないでしょう?脚はおろか頭まで消えていることがあるんですから!
Dr.T:・・・よく今まで悪徳商法にひっかかっていないものだな。そんなもの簡単にできるぞ?
助手:えええー?集団で一人の片足が無いってんじゃないんですよ?頭が無かったりするんですよ?
Dr.T:パソコンを使えばお茶の子さいさいだ。
助手:・・・ふっふっふっふ、はっーはっはっはっは!語るに落ちましたね。パソコンで加工したって印刷すれば一目で写真と違うってバレバレじゃないですか!それは写真なんですよ!?
Dr.T:写真に撮ればいいだろう?
助手:画面を撮るのって難しいんですよ?特にCRTディスプレイはシャッタースピードが速いと画面が切れちゃうし、光を反射し易いし、フラットディスプレイだって撮影者が写り込んでしまってきれいには撮れませんよ。
Dr.T:TVプロジェクターって知ってるか?
助手:・・・テレビ画面をスクリーンに映すヤツでしょ?ホームシアターとか言って売っている・・・、あ!!
Dr.T:パソコンにAV出力があれば、スキャナで撮り込んで加工した画像をテレビプロジェクターからスクリーンに投影できる。あとはそれをじっくり撮影すればいい。絞りとシャッタースピードを調整すれば、けっこうなものに仕上がるんだよ。これは昔特撮映画でも使われていたテクニックだな。後ろに背景を映しながらスタジオで演技するという、リアプロジェクション方式もしくはフロントプロジェクション方式ってやつだ。
助手:・・・じゃあ、じゃあこういうのはどうです?その、手すりやガードレールのスキマだけに顔の一部が映っているってやつ!エッジがなまってないから合成ではありえないですよ!
Dr.T:その顔ってモノの大きさは?
助手:え、えーと・・・だいたい普通の人よりも小さかったりします。・・・だから不思議なんじゃないですか?そこに人が立っていたとしてもそうは映らないんですよ?
Dr.T:例えば、誰かのアップの写真をだな、プリンタで印刷する。そして木の枝の隙間、階段の手すりの隙間、ガードレールの隙間なんかに貼りつける。ちょうどおさまるくらいに切ってな。
助手:えええええええ?
Dr.T:そのまま写真を撮る。いっしょに映す人にも気づかれなければベストだな。まぁたいがい、グルだろうが。
助手:ま、まさかぁーーー!?
Dr.T:同じ距離、同じ光源で撮るから不自然さは減るし、目立たないところに貼るから、一見気づかれにくい。もちろんネガにもポジにも細工のあとは残らないし、撮り終わったらくるくるぽいだ。
助手:そ、そんなことまでして何の得があるんです!?
Dr.T:テレビ局じゃ心霊写真を「買う」だろう?番組製作のために。出来の良い「心霊写真」は金になるんだよ。
助手:そ、そんな、それじゃあまりに・・・。
Dr.T:それが証拠にこれだけデジタルカメラが普及しているのにデジカメで撮った心霊写真ってのにはお目にかかったことがない。まぁ※6銀塩と違って一目で加工がばれるし、二重露光もできないから当たり前といえば当たり前だがな。
助手:心霊写真は全部インチキなんですか〜?
Dr.T:全部が全部インチキじゃあない。
助手:そ、それじゃあ!?
Dr.T:勘違いするな。インチキではなく、操作の誤り、機械の誤作動など無自覚に撮られた「心霊写真」があるってことだよ。もともと写真は真を写すもの。どんなに霊と主張してもそこに写ってしまっている以上、それは光を発するもしくは光を反射する何かでなければならない。※7見えないものは写真にも写らないのだからな。
助手:・・・はぁ、ドクターといるとこの世のすべてが否定されたような気になります。
Dr.T:そんなことはないぞ。ワタシは科学の可能性を否定したりはしない。霊が科学的に存在すると立証しようという試みは繰り返されている。
助手:そ、それじゃあ幽霊は実在するんですね!?
Dr.T:何を今まで聞いて来たかなぁ。幽霊がいなくとも「心霊写真」は撮れるだろ?
助手:・・・じゃあ墓地や霊園、果てはお坊さんや神主さんにいたるまでみんな詐欺商売ってことですね?
Dr.T:ばかものー!どうしてそう極端に走るかなぁ。いいか、先祖の供養など信仰と科学は別のものだ。
助手:えええええ?どうしてーーーー?
Dr.T:科学とは、観察と実証からなるものだ。そこに特定のイデオロギーなどない。いいか、現象があるからこそ科学はあるのだ。
助手:というと?
Dr.T:目の前に起こっている出来事がなぜ起きているのか?それを調べるのが科学だ。今回の心霊写真については、目の前に「心霊写真」という現象があり、それが「幽霊」以外でも起こり得ると指摘しただけにすぎない。
助手:でも・・・?
Dr.T:科学は観察と実証からなる。神や仏は観察や実証なぞできないだろう?信じるものだけ救われてれば良い。科学は信仰とは無縁なものだ。すべてのものに適用されるはずの物理法則・科学法則を超越した存在が神ならば、論理的な解釈はできないのだよ。
助手:じゃあ?
Dr.T:科学的に言えば、幽霊が物理法則にのっとった存在なら、写真に映ることもありうるだろうな。
助手:じゃあじゃあ?
Dr.T:勘違いするな。もし物理法則にのっとった幽霊なら、君の思っているようなものにはならないぞ。
助手:ど、どーゆーことです?
Dr.T:・・・ではまた次回に!
助手:まだひっぱるんかーい!?
※2 ネガフィルムにX線が当たると感光剤が反応して明るい縦スジや波のようなうねり、真っ黒な影が写ることがある。特に最近はテロ対策のため強力なX線を用いた検査機が登場し。海外のみならず国内空港でもX線による感光が起こることがある。フィルムは別にして手荷物検査を受けよう。
※3 ほんとはもっと複雑で三原色それぞれの光に対する感光層が3重・4重に重なっているはず。簡略化しているのでツッコミはかんにんして。
※4 「いちがんれふ」と読む。写真を撮るレンズと覗くレンズが同じカメラ。覗く部分(ファインダー)が撮影レンズと違うものは1眼レフとは呼ばない。昔レンズが2つついた2眼レフというのもあった。
※5 撮影前のフィルムで、べろべろとはみ出しているフィルムの先っちょの部分。カメラに巻き取られるとかなりカールするので案外簡単にベロを残して巻き戻せる。APSフィルムにはこれがない。
※6 いわゆる普通の写真に使われている感光剤を一般に銀塩という。塩化銀・臭化銀など、ハロゲン元素と銀の化合物である。光が当たると一部が変化して、化学反応によって銀が遊離しやすくなるため、これをゼラチンなどで固めて、画像を固定するのに使われる。デジタルカメラの登場から、今までのカメラを「銀塩カメラ」と呼ぶことが多くなった。
※7 実は見えないものでも写真に写せる。赤外線フィルムを使うと可視光+赤外線、紫外線を写し込めるので、人の目には見えないものを写せる。またデジカメやビデオカメラも人間の目よりも広い範囲の光線を感知できる。