Dr.Tの不思議の謎を解かねばならぬ


其の四血液サラサラで健康になる?


助手:ドクター、ドクター、やっと手に入りましたよ、もうこれがなかなか手に入らなくって‥‥。

Dr.T:?何をそんなに‥‥な、なんだそのレジ袋いっぱいの納豆は?

助手:そうですよ!ご存じないんですか?ここ数日納豆が入手困難なんですよ!?

Dr.T:???なんでたかが納豆が?

助手:はは〜ん、ドクターはひょっとしてご存知ないんですね?納豆は血液をサラサラにしてくれてダイエット効果もあり、そのうえ脳血栓を防いでくれるという優れものの食品なんですよ?!

Dr.T:ふむふむ、それは興味深いな。血液サラサラとはどういうことかね?

助手:ふふ〜ん♪やっぱりドクターも医学は専門外なんですね〜。いいでしょう、不肖このワタクシがお教えいたしましょう。血液というものは全身を流れていますが、血管の内側にコレステロールが詰まるように、ドロドロネバネバした血液になると高血圧や生活習慣病の恐れが出てくるんですよ〜。

Dr.T:ふむふむ‥‥で?

助手:ドロドロネバネバした血液になるのは食べ過ぎ飲み過ぎ運動不足、強いストレスなどが原因とされています。でも、タマネギや納豆といった食品を摂ることでそんなドロドロ血液をサラサラ血液に変えてくれるんですよぉ!

Dr.T:ほほう。ではタマネギや納豆だけを食べ続けていれば健康でいられる、とこういうわけかな?

助手:だ、だけってそんな‥‥極端な‥‥。

Dr.T:血液が流れにくくなる症状には、多血症や高脂血症などあきらかに原因があり、対症療法が定められているものもあるがそれもタマネギや納豆で治る、とこういうわけだな!?

助手:そ、そんなことはーーーー。(汗)

Dr.T:脳梗塞防止のために血栓が出来るのを防ぐワーファリンカリウムという薬を飲んでいる人は、納豆が大量に含んでいるビタミンKのために薬の働きが阻害されるので、納豆巻き一つとして口にしてはいけないんだがそれでも『健康にいい』として納豆を食わせるというんだなーーーーー!?

助手:そ、そーなんですか!?

Dr.T:もともと血液は何から出来ている?

助手:え、えーと、ヘモグロビン?

Dr.T:小学生から理科をやり直せ!ヘモグロビンは赤血球に含まれるタンパク質だ!

助手:あ、あーあー、そうそう、赤血球と白血球、それと血小板です!

Dr.T:肝心なものを忘れているぞ?それでは血液の成分のおよそ半分でしかない。

助手:え?

Dr.T:血漿だ。

助手:け、けっしょう?血小板じゃなく?

Dr.T:血小板は血液の中の血球成分のおよそ1%に過ぎない。出血をとめるための成分だ。

助手:じゃ、血漿って?

Dr.T:血液の55%を占める液体成分だよ。そのほとんど、およそ96%は水分だ。

助手:み、水?

Dr.T:残りの4%に無機塩類、糖、脂肪などが含まれる。まぁ大きな分子を除けば海水に近いと言える。

助手:か、海水?

Dr.T:かつて人工血液の候補として海水を用いたこともあったのだよ?それに濃度0.9%の生理食塩水は緊急時の輸液にも使用される。

助手:ええー !?

Dr.T:もともと血液は、静かに置いておくと血球成分と液体成分に分離するのだ。

助手:え?そうなんですか?

Dr.T:血が固まらないようにする薬剤を混ぜてから遠心分離機で分離してもよい。ほら献血で成分献血っていうのを聞いたことがないか?

助手:あ!

Dr.T:あれは、一度抜いた血液を遠心分離機にかけ必要な成分を取り出したあと、残った血液を戻すという献血方法なのだよ。

助手:え!?そ、そんな方法があったなんて‥‥。

Dr.T:200ml、400mlの全血献血ではさっき言ったように血小板はほんのわずかしか含まれない。しかも保存するために輸血用には赤血球や血漿を分離して保存するのが一般的だ。しかしそうした血液は酸素を運ぶ力はあっても血を止める力はほとんどない。

助手:血小板が1%程度しか含まれていないから‥‥ですね?

Dr.T:うむ。実際、人間の血液は複雑な免疫システムの中核とも言える。血管に異物が入ると白血球が襲いかかり血小板が血液を凝固させ、その異物のそれ以上の侵入を拒む。

助手:へぇ〜。よく出来てますねぇ〜。

Dr.T:生活習慣病というのは日々の食事などの生活習慣で、こうした血液のホメオスタシスを乱す傾向が固着したものなのだ。

助手:ほ、ホメロスのオデュッセイア?

Dr.T:そりゃ歴史書じゃ!わかりにくいボケを‥‥。

助手:す、すいません。ホメなんとかってなんでしたっけ?

Dr.T:日本語では恒常性と呼ばれる。生物の身体が化学的平衡を保つ働きだよ。

助手:かがくてきへいこう‥‥。

Dr.T:何も難しいことではない。例えば水を飲むとトイレが近くなるな?

助手:そ、そんな簡単なことなんですか?

Dr.T:ほほう。ではここにある2リットルのペットボトル6本を飲み干してみたまえ!

助手:そ、そんなに飲んだらトイレから出られなくなってしまいます〜!

Dr.T:本当にそうかな?

助手:ど、どういうことです?

Dr.T:言ったとおりだ。水分はどこで吸収されるのかね?

助手:え?胃‥‥じゃなくて腸、ですよね?

Dr.T:うむ。しかも消化器系の末端、大腸で吸収される。水は胃に1時間くらいは溜まるので、大腸で吸収され腎臓で濾され尿となって体外に排出されるのは数時間後のはずだ。

助手:そ、そんなものなんですか?

Dr.T:うむ。そこが人体の優秀な恒常性の働きなのだよ。水分を摂取したことは人体に張り巡らされたセンサーによって化学反応という形でフィードバックされる。血液中の水分量が増えると、脳は尿を排出するように指令を下す。これは体温とも密接な関係があるのだ。

助手:体温ですか!

Dr.T:わかるかね?水分は便と違って、消化器系からは排出されない。一度血液に入ってから腎臓、膀胱を通じて出てくるために、純粋な人体からの分泌物なのだ。

助手:じゅ、純粋って‥‥汚いじゃないですか‥‥。

Dr.T:健康な人間の尿なら雑菌などいないよ。

助手:えーーー!?おしっこってばい菌だらけじゃないんですか?

Dr.T:尿に雑菌が繁殖する場合は膀胱炎とか尿道炎などの病気の場合だけだよ。汗とほとんど変わらんよ。

助手:げげ!じゃ、じゃあ‥‥汗かいたらおしっこまみれってことですか?

Dr.T:極端だな、君は‥‥相変わらず。

助手:だ、だって‥‥。

Dr.T:ではそんな恒常性をもって常にバランスを保とうとしている身体のシステムに、「偏食」「睡眠不足」「ストレス」「暴飲暴食」などという不規則な生活習慣を与えた場合どうなるね?

助手:え、え〜と‥‥その‥‥。

Dr.T:はじめのうちは人体は恒常性によりバランスを保とうとするだろう。しかし人体は機械ではない。この数値で健康、などというデータを蓄積してはおけないのだ。

助手:ってことは‥‥。

Dr.T:そう、過剰な糖分や塩分の摂取も、それが続けば安定してしまう。その結果生活習慣病になるのだ。

助手:だ、だから納豆でサラサラ血液‥‥

Dr.T:毎日納豆を食うことは決して悪くはない。しかし、「偏食」ではいかん。納豆は非常に優れた発酵食品であり健康食品ではあるが、尿酸を多く含むために血中の尿酸値が高い人は痛風予防の観点からもお勧めはできん。

助手:つ、痛風?痛風は贅沢な食事でなるんじゃないんですか?

Dr.T:尿酸値が高い食品の代表格はビールと干した魚、貝類だ。決して高価なものばかりじゃないぞ?

助手:そ、そんなぁ〜‥‥粗食の代表、納豆で痛風になるなんて‥‥。

Dr.T:なると決まっている訳ではない。尿酸は文字通り尿に多く含まれるのだから、水を飲んできちんと尿を出せばコントロールできる。おまけに血液サラサラになる。

助手:え?そ、そんな、水だけで血液サラサラなんて‥‥!?

Dr.T:今までの話を聞いてなかったのか?血液の55%は液体成分で、その96%は水分だ。血球成分が流れにくくなることへのもっとも簡単な対策はこまめに水分を摂り、尿を出すことだ。

助手:そ、そんな簡単でいいんですか?

Dr.T:もちろん飲酒や喫煙も良くない。酒は浸透圧の関係で体内の水分をより出しやすくして、軽い脱水状態を起こす。タバコは血管を収縮させる働きがあるために赤血球、白血球の増加を招き血液が流れにくくなる。

助手:だったらやっぱり納豆を‥‥。

Dr.T:納豆やタマネギをそのまま食べて水分を摂らなかったら、結局血圧は上がるし血中の水分は減少方向に向かうよ。納豆には醤油がつきものだろう?醤油の塩分は、水分を体外に排泄する働きを促してしまうしな。

助手:な、なんと‥‥

Dr.T:軽い運動も新陳代謝を活発にさせて血流を促す。きちんと血液が流れるには同じ姿勢を続けないで、身体に刺激を与えることが重要だ。運動による心肺機能の強化は重要なのだよ?

助手:す、すると‥‥認めたくはないですが‥‥また僕はダマされたんですかぁ?

Dr.T:うむ。ただ納豆が健康にいいのは事実だ。ただし万能じゃあないし、もちろん運動もせず、大酒飲んでタバコすって「納豆食べているから大丈夫」なんてことには決してならない。要はバランスであり、特定食品が万病に効くなんて幻想はそうそうに捨てるべきだな。特に血液サラサラにするのは特定食品などではなく、きちんと水分を摂るだけでもそれなりの効果が期待出来るダイエットと称して水分を控えるなど愚の骨頂だ

助手:うう〜。もうテレビなんか信じるものかぁ〜。

Dr.T:だから納豆が身体にいいのは事実だよ。まぁ納豆は日持ちするし、買って来た納豆は無駄にはならないさ。

助手:そ、そうですよね!?ど、ドクターもぜひ納豆食べて健康になりましょう!

Dr.T:わ、わしゃ‥‥、その‥‥尿酸値が高いんで‥‥少し納豆は控えないと‥‥

助手:そ、そういえばドクターはビール大好きですもんね‥‥。ん?じゃあ、日がな研究室にこもって研究してるドクターの生活習慣は実はろくでもないんじゃあ‥‥。

Dr.T:ぎく!

助手:(ニヤリ)ドクター〜♪軽く散歩でもしませんかぁ?

Dr.T:ま、待て、助手!確か君は、学生時代陸上選手だったとかなんとか‥‥

助手:いいえ〜?ただのバカ学生でしたよぉ〜?(ニヤニヤ)

Dr.T:ち、ちょっと待て‥‥あ、ああああああああああああ